糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症は、糖尿病がきっかけとなって起きる網膜の障害で、糖尿病神経症、糖尿病腎症と合わせて糖尿病三大合併症のひとつです。糖尿病は血糖が高いことで血管が詰まりやすくなり、とくに毛細血管がダメージを受けるため、毛細血管がたくさん集まっている網膜は障害を受けやすく、糖尿病網膜症が発症します。なお重症化すると失明のおそれもあります。
糖尿病の発症が確認されても、すぐに糖尿病網膜症を併発することはありません。実際には糖尿病発症後、数年~10年程度かかると言われ、発症後8年が経過すると網膜症を併発するリスクは高くなると言われています。
そのため、まずは糖尿病の治療に努めることが重要です。血糖のコントロールをしっかり行っていれば、糖尿病網膜症の予防となります。しかし、眼の経過観察は必要になりますので、眼科へは定期的に通院するようにしてください。
なお糖尿病網膜症の発症が確認されたら、治療を行う必要があります。網膜症の進行度合いによって治療方法は変わります。糖尿病網膜症は主に3段階(単純・増殖前・増殖)に分けられ、眼底検査や蛍光眼底造影検査等で状態を確認し、患者様の状態に応じた治療を行っていきます。具体的な症状と治療法は以下の通りです。
- 単純糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の初期)
- 初期は自覚症状がありませんが、小さな眼底出血や白斑がみられます。この場合は糖尿病治療である血糖値のコントロールで、多くは進行を抑制できます。定期的な眼科受診による経過観察が必要です。(3ヵ月に1回程度の通院)
- 増殖前糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の中期)
- 小さな眼底出血、網膜における血流が悪くなるといった所見が現れますが、自覚症状がない場合もあります。症状がないからと何もせずにいると増殖糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の進行期)に進行しやすく、血流不足による酸素・栄養不足に陥った網膜に対してはレーザー治療(網膜光凝固術※)を行います。定期的に詳細な眼底検査を受ける必要があります。(1カ月に1回程度の通院)
- 増殖糖尿病網膜症(糖尿病網膜症の進行期)
- さらなる網膜の血流不足により、網膜新生血管(新しくできた病的な血管)ができてしまいます。網膜新生血管により、硝子体出血を起こしたり、増殖膜という線維膜が網膜上に貼りつき網膜を引っ張ることで、牽引性網膜剥離や難治な血管新生緑内障など、様々な病態が引き起こされます。複数回によるレーザー治療(網膜光凝固)が必要ですが、それでも進行を抑えることができないような場合は、硝子体手術を行います。
※網膜光凝固術:糖尿病網膜症の進行を抑えるために行われるレーザー治療で、治癒するためのものではありません。進行状態によって、レーザーの照射範囲や照射数は異なります。なお単純糖尿病網膜症の方でも黄斑症を発症している患者様にも同治療は行われます。
糖尿病黄斑症
網膜の血流が悪くなることで、網膜の中心(黄斑)にむくみ(浮腫)が生じ、視力低下やゆがみなどの症状がでる状態です。
治療方法は、状態の進行度に応じて、点眼薬、内服薬、レーザー治療、硝子体内注射(眼球内に薬剤を注射)、手術療法などを選択します。